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喘ぐなら、彼の腕の中で
第20章 2人の始まり


「はぁ~、やっぱり宮本さんはズルイっす」


顔を赤らめた木村が、ほうっと溜息をつく。


「クールなのにそんなお茶目な一面まで兼ね備えているなんて」

「おいマジでシバくぞ」

「女じゃなくてもマジで惚れちまいます。
本気で俺じゃだめっすか?」

「残念だが俺は勃たねぇらしい」

「あぁ、その噂誰かから聞きましたよ。
アホらしい」


表情を戻した木村は、しら~っとした声に変わる。


「誰も信じてませんよ、そんなデマ。
どっかのバカ女が流した戯言でしょう」

「……お前、急に男に戻るんだな」

「俺は男ですしストレートですよ!
彼女欲しいし!
宮本さんが特別に好きってだけです!」


……どちらにしても気持ちわりいけど。

まもなく朝礼の時間になり、先にミーティングを始める店舗開発の面々が立ち上がった。

それを見た木村がヒソヒソと俺に囁く。


「綾瀬さんとか、彼氏いますかね?」

「………」

「俺、実は結構タイプなんですよね~~♪
宮本さん、知ってます?」


木村のウキウキとした顔をちらっと見た後

俺はキーボードを打つ手を止めた。


「……あの女はやめておけ」

「え?なんでですか!?」

「1秒でも触れてみろ。
その瞬間、お前は永久パスポートを手に入れることになる」

「へ?どこのですか?」


………宇宙人の次はこいつかよ。

穏やか・優しい・おっとり……それに加え共通の味覚まで持つこっちの方が、断然油断できねぇ。

自分でもドン引くほどの嫉妬心を燃やしながら、俺は木村に冷たく言い放った。


「………あの世」




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