この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
喘ぐなら、彼の腕の中で
第20章 2人の始まり

「はぁ~、やっぱり宮本さんはズルイっす」
顔を赤らめた木村が、ほうっと溜息をつく。
「クールなのにそんなお茶目な一面まで兼ね備えているなんて」
「おいマジでシバくぞ」
「女じゃなくてもマジで惚れちまいます。
本気で俺じゃだめっすか?」
「残念だが俺は勃たねぇらしい」
「あぁ、その噂誰かから聞きましたよ。
アホらしい」
表情を戻した木村は、しら~っとした声に変わる。
「誰も信じてませんよ、そんなデマ。
どっかのバカ女が流した戯言でしょう」
「……お前、急に男に戻るんだな」
「俺は男ですしストレートですよ!
彼女欲しいし!
宮本さんが特別に好きってだけです!」
……どちらにしても気持ちわりいけど。
まもなく朝礼の時間になり、先にミーティングを始める店舗開発の面々が立ち上がった。
それを見た木村がヒソヒソと俺に囁く。
「綾瀬さんとか、彼氏いますかね?」
「………」
「俺、実は結構タイプなんですよね~~♪
宮本さん、知ってます?」
木村のウキウキとした顔をちらっと見た後
俺はキーボードを打つ手を止めた。
「……あの女はやめておけ」
「え?なんでですか!?」
「1秒でも触れてみろ。
その瞬間、お前は永久パスポートを手に入れることになる」
「へ?どこのですか?」
………宇宙人の次はこいつかよ。
穏やか・優しい・おっとり……それに加え共通の味覚まで持つこっちの方が、断然油断できねぇ。
自分でもドン引くほどの嫉妬心を燃やしながら、俺は木村に冷たく言い放った。
「………あの世」

