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喘ぐなら、彼の腕の中で
第20章 2人の始まり

.。.:* side 沙月 *:.。.。.:**:.。.。.:**:.。.。.:*


「沙月ちゃーん、どうする?
もうこの納期でOK出しちゃう?」

「いえ!もう1回交渉しに行ってきます!
たった今アポ取れたところなので」

「あはは、さすが。
じゃあ照明のところだけ未定にしとくね」


お昼前の11時。
先輩の笑顔に送り出され、図面を入れたバッグを持ってフロアを後にする。

今日から6月になり、梅雨を感じさせるどんよりした曇り空だけど
私は気合いを入れて、下りのエレベーターのボタンを押した。


すると、後ろから


「人の領域にふざけたモン置きやがって」
「……!」


低い声のした方に振り返ると
ストライプのスーツをビシッと着こなした莉央が、カバンを持って立っていた。

同じくこれから外出するようだ。


「あら、嬉しそうでしたけど?」

「調子に乗るなアホ。
俺のデスクを動物園にする気か」

「勘違いされちゃ困るわ。
全ての女をさっさと切らないと、本物の肉食獣を用意するからね」


土曜の夜から日曜にかけて、莉央の携帯がひっきりなしに鳴るもんだから
催促という名のささやかな攻撃として、帰りに公式ショップに寄って購入したんだ。


その数、占めて全部で4つ。

莉央の言葉を信じて、それ以上は買わなかった。


・・・分かってるわよね?




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