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喘ぐなら、彼の腕の中で
第22章 ★清算済み

「~~~莉央! 顔!!」
「………は?」
「優しい顔になってる!!」
横断歩道の手前で立ち止まって、大画面を見上げていた莉央が、興奮した私に目線を戻した。
その顔は、いつものクールな表情に戻っている。
「そう!その人を見下すような冷たい目。
それでこそドSで血も涙もない営業一課の宮本さんよ!」
「……勢いにまかせて盛ってんじゃねーよ。
何、いきなり」
「本当に清算済みなんでしょうね!?」
「何が?」
「トボけないで!
今、ものすごぉ~い温かくて愛しい目で彼女を…」
「信号青になったぜ」
細身のカーゴパンツのポケットに手を入れて、莉央は横断歩道をスタスタと進んだ。
……すれ違う女の子達の視線が、それはもう吸い取られる勢いで莉央に集中する。
「~~~芸能人かお前は!!」
叫び声に近いツッコミを言い放ち、慌ててその後を追いかけた。
………7月初旬。
梅雨が明けて夏本番を迎えた今日は、会社が休みの土曜日。
デートに相応しい、晴れやかな天気。
幼なじみの莉央と恋人同士になってから、1ヶ月が経った。

