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喘ぐなら、彼の腕の中で
第2章 私が2番目なの?


「お願い、出て……!」


屋上に着いて、誰もいない端まで進みながら
携帯を耳に押し付けて、彼が電話に出てくれることを祈る。

4月後半となった今、心地よい春風が通り抜けるけど
そんなの感じられないくらい、大量の汗が吹き出ていた。


『はい、もしもし』
「……! 芹澤さん!」
『綾瀬(あやせ)、どうしたの?』


“ 綾瀬 ” は、私の名字。

同じ部署の先輩と後輩だし、社内では名前で呼ばないって決めてるから当たり前だけど。

今の私としては

ベッドの中で囁いてくれる時のように
“ 沙月 ” って、名前で呼んでもらいたかった。


「ごめんなさい、今現場ですよね?」

『ちょうど内装の打合せが終わった所だから、大丈夫だよ。
もしかして、先方からの図面遅れてる?』

「い、いえ……仕事の話じゃないんです」

「……!」


私の言葉に、芹澤さんが無言になった。


……無理もない。

だって私
仕事中にプライベートの電話なんて、今までしたことないもの。





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