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喘ぐなら、彼の腕の中で
第6章 ベストを尽くせ


大至急、と言った莉央の声で
営業の後輩くんと事務の女の子が、ピシッと背筋を伸ばしてデスクに向かった。


「………」


……え?
ま、待って。

……莉央?


「そのガラスの什器、2tトラックで運べる?」

「……へっ!?」


携帯を耳に押し当てた莉央が、私に向かって聞いてきて
ハッと我に返る。


「う、うん、充分…」
「開店は何時?」
「し、7時…」
「あーもしもし? ゴウさん?」


私が答えると同時に、電話の相手に向かって莉央は話し始めた。


「ちょっと頼まれてほしいんだけど。
今から名古屋の荷物、都内まで運んで欲しいんだ」

「………!!」

「栄町なんだけど、今現場に名古屋営業所の奴を待機させるから。
道に慣れてるドライバー見つけて、飛ばしてくれねぇかな」


その後も少し会話を続けたあと

莉央がふっと笑った。


「ありがとう。
陳列シェルフ1台なんだけど、代替えが利かなくて」

「……っ」

「どうしても夜までに必要な、大事なモノなんだ」



……莉央……っ


全身に鳥肌が立つ。

周りの皆は呆気に取られながらも、キラキラした目で莉央を見つめている。



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