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喘ぐなら、彼の腕の中で
第7章 涙


衝撃のあまり、音を立てて椅子から跳ね上がった。


「やっと起きたか」
「……っ」
「泥酔バカ女」


スーツの上着とネクタイを、反対側のイスにかけて
煙草を咥えた莉央が、ダルそうに座っていた。


「な、な、なんでここに…」


酔って頭が回らないけど
青山を出る前に、確かに私は……


「お前マジでいい根性してるな。
今日別の女にドタキャンされたって、俺は言ったはずだ」

「………!」

「同じ日に同じ目に合わせやがって。
俺はな、そんな価値の低い男じゃねぇんだよ」


“ 今夜は疲れて帰るから、やっぱり逢えない ”


たった一言、メールだけで済ませた私も悪かったけど

何で?
どうやってここに辿りついたの?


「どうしてここに…」

「お前この店以外に1人で飲む所ねぇだろ」

「なんで1人って分かっ…
そ、それに今もう深夜1時…」

「ずっと付き合ってたわけじゃない。
休み前で残業してたし、来たのは1時間前」

「………」


ずっと私と一緒にお喋りしてたんですよね、とマスターが言ったその先に
吸殻がこんもり溜まった灰皿が置いてある。


……絶対、1時間じゃない……



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