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水は低きに流れる
第3章 流されやすくて
岩崎さんは正社員の定時時間過ぎにやってきた。

時間もなかったから野菜炒めと味噌汁という簡単な晩御飯。

こんなメニューでも一人で食べるより2人で食べた方が美味しく感じる。

離婚するまで半年くらい1人で食べることの方が多かったから、誰かの為に作ったり一緒に食べるのは久しぶりで嬉しかった。

食べている間は好きなバントの話や仕事中にあった他愛もない話をした。

食器を洗って部屋に行くと、岩崎さんはテレビの正面のベッドにもたれる定位置に座ってコーヒーを飲んでいた。




チラッと私を見て、布の手提げ袋を手元に寄せた。



「これ、何かわかる?」

「何ですか?」



手提げから出したのは黒いテープ?



「ビニールテープ?」

「これはボンテージテープ」

「なん、ですか?」



答えずにテーブルの上にそれを置いた。

なんか、嫌な予感がしてきた・・・

次に出したのは睡眠グッズによくあるアイマスク。


「これは?」

「アイマスク?」

「正解」


あとは・・・と言いながら机の上に怪しげなモノが並んでいく。

大人の玩具というやつだ。

男性器を模したモノ、ローターとかいうやつ・・・


「あの・・・こんなプレイしたいんですか?」


一応、なんとなくなら分かるけど、実物を見るのは初めてで戸惑う。



「お前にだけな」

「・・・そういうことは私以外でしていただけたら・・・よろしいかと」



引き攣った顔で少し後ろに下がる。

ゆっくりと言い聞かせるように岩崎さんが言った。



「お前にしかこういうことしたいって思わないの」


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