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水は低きに流れる
第4章 流されるまま
皆がどこら辺に住んでいるのかなんて話をしたことがなくて、ここがどのあたりなのか全然見当がつかない。

私のうちが会社の近くってことは分かってるみたいだから会社へ向かってるんだと思う。



「ごめんね、一番最後になっちゃって」

「あ、いえ、大丈夫です」

「あと30分で着くから」

「あ、はい」



それにしても私も車運転するけど、うちから30分内でこんなとこ来たことないや。

店とかも少ないし、どこなんだろう・・・。

少し不安になりながらもキョロキョロしてると、佐藤さんの友達が振り向いた。


「愛美ちゃんでいいかな?」

「あ、はい」

「俺、アキ。アキちゃんって呼んでよ」


すごく気さくで人当りの良い話し方が元夫とますます似ていた。


「これ、飲む?」


アキちゃんが錠剤を渡してくれた。


「何?これ?」

「二日酔いにならない薬。水なくても飲めるやつ」

「ありがとう」



多分、これがアキちゃんじゃなきゃ、絶対に怪しくて飲まなかったと思うのに何のためらいもなく薬を飲んた。







元夫と初めて会ったのは友達に無理やりSNSのオフ会という社会人サークルみたいな集まりに参加させられた時だ。

年齢男女問わずに集まって遊ぼうみたいなコミュニティらしく、その日は花見を兼ねたバーベキューらしかった。

すぐに打ち解ける友達を横目に私は1人で戸惑っていた。


(『大丈夫?1人ならこっちで手伝ってくれると助かるな』)


さりげなく声をかけてくれて、すごく親切で見た目も好みだったから嬉しかった。


(『愛美ちゃんて呼んでいい?』)



名前を呼ばれると一気に距離が縮んだ気がして、その日、唯一連絡先を交換した人が元夫。


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