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水は低きに流れる
第4章 流されるまま
似てるっていうだけでドキドキするなんてどうかしてる。

元夫とは違うって何度も思おうとしても、知り合ったばかりの頃の彼を思い出してしまう。

女子高出で付き合った人もなくて、厳格な父親と兄くらいしか身近な男の人はいなかったから、元夫のように優しくて親切な人は初めてだった。

つき合い始めて「可愛い」と言ってくれるだけで胸がいっぱいになって夢中になっていったんだ。

完全に恋に恋する状態だったと今では思う。

あとで、誰にでも「可愛い」「好きだ」と言う軽い人だったと聞かされて、彼の愛情が分からなくなっていった。

そして、彼の出張の回数がどんどん増えて1人でいることが多くなってく。

好きだったんだけどな・・・。






独特のフットブレーキを踏む音がした。

エンジンの音が止まる。



「え?」


元夫とのことを思い出しながら、ぼんやりして外の景色なんか全然見てなかった。


車は停まってるけど、うちのマンションの駐車場じゃない。

薄暗いけど離れた場所で明るいネオンの看板がチカチカしている。

建物の入り口は自動ドアで奥に電光パネルが見えた。

ここ、ラブホテルだ!


「ちょっと、ここどこですか?!」


佐藤さんが運転席から降りてスライドドアを開ける。

シーッと指を立てて悪びれもなく言った。


「騒ぎたてると恥ずかしいのは君だよ?」


ドクンっと心臓がして体が強張った。
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