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私の中のおっさん
第1章 巨人女から 叔父様との関係を強要されて――
「ねえ、叔父様? 今あたしが ぎゅうって握り締めたら、ねねちゃん、どうなっちゃうかなあ?」
「……――っ」
「あ、今「こいつはやらないだろう」って思った? 残念でした~。あたし、今 超イラついてんの。理由 分かるでしょ?」
怒気を滲ませた菊の声音に呼応し、わたくしを掴む大きな掌に加わる力が強まって。
「君の境遇には同情する……。しかし、それと ねねとは関係ないじゃないか」
何とか冷静さを保ちながら説得を試みる叔父にも、菊は酒臭い息を「ふん」と吐くばかり。
「どうか ねねを解放してくれ。代わりに、私を好きにしてくれればいい」
代替案を提示した叔父に、菊は私を掴む掌の力を若干緩めた。
「あら素敵❤ 自分はさて置き、姪っ子ちゃんの心配ばかりするのねえ? ますます気に入ったわ」
「お、叔父様……」
わたくしは成す術無く、途方に暮れて叔父を見下ろすばかり。
「「叔父様ぁ♡」だって。ふふ、本当に日本人形みたいよねえ? ネットで売りさばけるかしら? 『リアルフィギュア! 喋ることも喘ぐことも出来ます』って煽ったら、ド変態おやじが高値で買ってくれるかも?」
「「……――っ」」
菊の脅しに、2人はただただ絶句した。
(わたくし……知らない男の人に売られて、玩具にされるの……? ど、どうして? わたくし、何か悪い事でもしたの?)
ねね は、これまでの16年間。
ひたすら真面目に生きてきた。
両親や親族の求める学力を身に着け、ピアノ・着付け・日舞・華道・茶道……。
代々続く呉服問屋の、跡取り娘として必要な素養を、言われるがままに身に着けてきた。
悪さもせず、反抗もせず。
ただただ言われた通り、まさにお人形の様に、良い子でいた筈なのに。
何を理由に、こんな不遇を強いられねばならないのか――?
「やってくれるわよねえ~~、お・じ・さ・ま?」
わたくしが自身に問い掛けている間にも、菊と叔父の間では攻防が続いていた。