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第3章 2人の事情

村田との他愛もない話に夢中になりクレアは山下の事など忘れていた。
ふと村田は時計を見た。「あっ。遅いからタクシー乗り場まで送るよ！」と村田言い席を立った。
【今日は泊まれないのないの？抱いてくれないの？】クレアはそう言いかけ口を閉ざし、
席を立った。まだ２３：００・・
クレアは村田に連れられタクシー乗り場へ行った。不服はある。でもワガママは言わない。
クレアは都合のいい女？いや、村田の体を気遣う優しい女？違う。ワガママを言えばもう逢えない・・クレアはそう理解していた。
「じゃまた明日！」クレアをタクシーに乗せ村田は別れを告げた。

タクシーは発車した。クレアが振り返ったその時には村田の姿はもうなかった。
クレアは無性に悲しく、切なく、やりきれない。
タクシーから流れる音楽がクレアの心を、思いを爆発させた。
「ラジオ消せよ！うるせーなあ！」運転手は驚き、「申し訳ございません」慌ててラジオを消した。しかしクレア自身が一番驚いた。そんな汚い言葉が自分の口から出るなんて。

何かがクレアの中で音を立てて崩れる。崩壊、決壊、打壊。

「申し訳ございません？謝るなら土下座しろよ！」

タクシーは止まり、「お客様あまりに暴言がひどいと降りていただきますよ」運転手は優しく、なだめるように言う。
クレア自身わけが分からなかった。お酒のせい？村田のせい？山下のせい？誰のせいでもない。それはクレアが一番わかっていた。

しかし崩壊したクレアは１０００円札を投げ、タクシーを降りた。

タクシーはブレーキランプが点滅、ウインカーが点滅、そして右折した。
「バカヤロー」クレアは叫んだ！叫んでも現実は変わらない。
映画のワンシーンのような、悲劇のヒロインのような、行き交う車のヘッドライトに映しだされたクレアはスポットライトを浴びた、ただただ美しい妖艶かつ官能的な人間の皮を被った悪魔のようであった・・


私はソファで眠ってしまった。何かに叩き起こされた気がした。
夢？なんの夢かわからない？しかし私は何かの夢を見ていた。真暗いリビングの明かりを付け、水道水を蛇口から直接ゴクゴクとの飲み干す。
ダイニングテーブルの上にあるレンタルビデオを見た。
「そうだ。借りてきたんだ・・」妻はまだ帰ってこない。リビングのテレビとビデオの電源を入れる。ビデオ挿入。