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覚醒
第4章 クレアの目醒
「でもね…何回かに一回は貞操帯を外す事を許されたんだ。妻は生き生きしていたよ。元々サディスティックなとこがあったし、私は妻が喜んでくれたら幸せだったんだな…」しみじみ初老の男性が言った。

「男と女はホント何が幸せかなんてわからないよ。」
男性は優しくクレアに言った。

「今もまだ私は妻に管理されてるんだ。」

「今も!」クレアは驚いた。【それはいくらなんでも…ウソでしょ!】クレアは思った。

初老の男性はニコニコして話しを続けた。

「さすがにもう何年も自慰や妻が誰かに抱かれる事はないけど…私はね、ガンなんですよ。もう入退院を何度も繰り返している。」

「でもね…妻は私が死ぬ事を許さないんですよ。私の命を必死で守ろうとする。私はね死ぬ事まで妻に管理されてるんですよ。」

クレアは何も言えずただ何かに感動した。
気がつくと女性はクレアと男性のすぐ後ろに立っていた。

「ほら、あなた!おしゃべりはそのぐらいにして。帰りますよ。あなたは私より先に死なせないから。」
女性は男性の手を取り、支えるように男性を立たせた。

「はいはい。わかりましたよ。せっかくの楽しい時間をまったくもう!」

男性は優しくクレアと妻の女性に戯けてみせた。

女性はクレアに言った。

「私たち変でしょ?でも私はこの人のおかげで幸せな人生を過ごしてるの。私はわがままだから最後まで幸せでいたいの。だからこの人に先に死なれたら…」

形はどうあれ2人は愛し合ってるんだ。クレアは思った。
形にこだわり、見栄や偏見に流されてた自分が恥ずかしく思えた。

「じゃあね。お嬢さん。元気出してね。」
初老の男性が言った。

「さようなら。また会えたらいいですね。」クレアは答えた。

そして店の中はバーテンダーとクレアだけになった。

クレアは水割りを頼んだ。


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