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覚醒
第9章 変化
「起きて、ねぇ起きて…」妻の声で私は目覚めた。
昨晩クレアとの出来事に家に帰ってからも興奮して朝方まで眠れず私は少しいつもより目覚めが悪く妻の声に怪訝な声で答えてしまった。

「起きてるよ…」

「あのね昨日お父さんから電話があって二人で今日会社に来いって言われたの?これから大丈夫?」

「ちょっと待って…」
私はスケジュールを確認した。今日は時間が決まったアポイントはない。

「うん。大丈夫だな…」

「じゃあ起きて支度できたら行こっか!」
珍しく妻が機嫌良く言った。

私は布団から出て支度をしながらクレアの事を思い出した。

【舐められるぐらい綺麗だね…】
クレアの言葉が頭をよぎる。屈辱的な出来事。
土下座、逆らえない指令、掃除、便器…

これから私はクレアにどんな命令をされ、どんな屈辱を受けるか不安と期待が入り混じる。
逆に妻に対しての後ろめたい気持ちも強くなっていた。

コーヒーを飲みながらダイニングテーブルで妻と向き合った。

「なんで今日呼ばれたの?」
「うん?よくわからない・・・」

会話は続かない。私は妻にビデオを見られ、それについて今晩話をする約束になっているが何を話せばいいのか、弁解するのか、すべてを認めてるべきなのか、答えの出ない事を考えていた。

「支度できてるの?」
妻が私に聞いた。
「うん。大丈夫だね。行く?」
「そうね・・・」

短い会話があり私達は家を出た。

妻の実家までは車で一時間もあれば着く。しかし通勤ラッシュの時間に家を出てしまった私達は渋滞に巻き込まれた。

「混んでるな・・」
「うん・・・」

短い会話はある。私は今晩の事、クレアの事が頭から離れず妻との会話ができない。
おそらく妻も同じだろう。

無音の車内、私は何か話をしないといけないという気持ちが囃し立てる。
【何を話せばいいのだろう・・】

「今度の大阪出張だけどおみやげ何がいい?」
「別に何でも・・」
「そう・・・」

また、会話が途切れた・・

「お父さんの会社に行くのは久し振りだね。」
「うん・・」

正直私は苛立ちを覚えた。しかし私は何も言えない。言えるわけがない。

一瞬私は頭によぎった。今お父さんの会社に行くのは、離婚話しをするため?
あのビデオの件だけで?いや、ビデオはきっかけににすぎず、今までの鬱憤が溜まっていたのか?
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