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第2章 会議室

もう何も考えられない。この場を逃れたい。

私は怯えた子犬のように震えた。被害者という立場か社会的立場が上であるからかクレアは冷静であった。クレアはさっきの週刊誌の内容を思い出し、合わせてクレアが過去に経験した事が頭をよぎる。

「悪いと思うんだったら土下座しなさいよ！」

私は驚き、慌てた。「ここで・・・？」私はクレアに聞いた。

「当たり前じゃん」クレアは答えた。「山下さんがした事は痴漢ですよ。犯罪ですからね」
私は何も答えられず呆然とした。【犯罪・・】ここで私ははじめて事の重大さに気づき、
触ってしまったことに初めて後悔した。

ふいにクレアは耳元で囁く。

「やれよ土下座・・」

そうクレアは先程の週刊誌で読んだのは痴漢されたＯＬがその痴漢を捕まえ駅で土下座させたという記事。
そして過去にクレアが高校１年の時、２学年上の先輩を・・そうクレアは女子校であったので先輩は当然女子である。クレアの鞄を盗んだその女子生徒を、クレアはクレアの友達数人で取り囲み責め、なじり、泣かせ、土下座させたこと。

クレアの中では今【土下座】がキーワードになっていた。

そしてクレアは私に再度

「やれよ土下座・・」

私は逃げることも、とぼけることもできたのであろう。今更ながら偶然だと主張してもよかったと思う。証拠などないであろう。あれば防犯カメラぐらいで、私がクレアに触れたのはほんの一瞬であり偶然という主張はまかり通った。

クレアが睨む。私は怯える。すでに私には逃げることもとぼけることも考えることすらもできなかった。

私は【土下座】をした。頭をアスファルトに付け謝罪した。

会社の目の前、数少ないが行き来する人はいる。頭をアスファルトに付けてるので確認はできない。知り合い？この滑稽な姿を見てるであろう。
【頼む。会社の人だけには・・】心のなかで願う。

私は「申し訳ございませんでした」
以外にも大きい声が出て、私は驚いた。心からの謝罪であったのだろう。
「本当に申し訳ございませんでした」私はクレアを見上げた。

すでにクレアは会社に向かって歩いていた。わたしは立ち上がり呆然とし、その場を動くことができず立ち尽くす。何人かに見られ、振り向かれ、私は羞恥心にかられ顔は真っ赤になっていたであろう。

すでにクレアの姿はなく、私は力なく会社に向かって歩いた。