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ゆっくりと
第1章 縁結びの樹


うわ…先客居る…場所代えようかな





縁結びの樹の下には
既に先客が居た
本を顔に被せて寝ている先客は
見たところ敬堵と同じ3年生男子のようだ



「しっかし3年がサボってて良いものなのか…
ま、授業下手くそな教師が悪いんだ・け・ど。」



敬堵はそう言うと
先客の顔に被せてある本をどかした


「う、わ……」


思わず感嘆の声を洩らした
何の手も加えられていない艶やかな黒髪
長い睫毛に縁取られた瞳
穏やかな寝息を立てる小さな唇



思わず敬堵は自分の口元に手を当て、しばし彼の顔に魅入った


自分で言うのもなんだが、敬堵は自分の見た目はソレほど悪く無いと思っていた

地毛の赤茶色の癖のある髪に、二重の瞳、それに背も高くスポーツ万能とくれば
言い寄ってこない女子はいない



だけど目の前の男子生徒は
パッと一目を惹く容姿では無いものの
何故か視線を外せなかった




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