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吼える月
第26章 接近

やがて祠官が口を開いた。
「あれは、1年前の春。4国の祠官と武神将が一同顔を合わせて、予言回避の策を講じる会議が始まる前。
リュカと名乗る者が、まだ蒼陵にいる私に、直接会いに来てこう言った」
――光に穢れし者達が、忌避すべき予言を成就させ蒼陵を滅ぼします。それを防ぐ為の、外敵から守る輝硬石を授けます。ですので、女神ジョウガの禁忌の箱を開ける、青龍の鍵をお渡し下さい。
「だから私は言った。なんの鍵のことか私にはわからない。それよりそんな国の存亡に関わるようなことを、容易く口にするではないと。
ジョウガの箱は祠官と武神将のみ伝えられる秘密。それを易々と口にするところに疑問を覚えた。無論、このリュカが黒陵の智将と呼ばれる者には結びつけておらず、ただ妙に品のある若者だとしか思っていなかった」
続けてジウが口を開く。
「そのほぼ同時期、私の元に皇主の三男、スンユと名乗る者が来てこういった。
"予言が成就した後、蒼陵は黒陵の次に滅びます。そうしない方法をお教えします。ですので、"その時"がきても、女神ジョウガの禁忌の箱を開ける青龍の鍵を決して誰にもお渡しならないで下さい"。
皇主の三男スンユ殿の顔は私は遠目で拝謁したことがある。皇位継承権を持たずに放蕩しているという噂のある方だが、その顔には不真面目さはなかった。皇主の息子ならばジョウガの箱の話を知っていてもおかしくない。だからとりあえずその話を聞いた」
――各国に伝わる星見の伝承。そこにある真の"輝硬石"を用いて、誰の目をも欺く場所にて、時が満ちるのをお待ち下さい。

