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吼える月
第26章 接近

「あっちもこっちも輝硬石か。なんだ、その"真の"輝硬石って。輝硬石に偽物もあるのかよ?」
「星見……確か、蒼陵に伝わる星見の文書に……輝硬石の話があったような…」
テオンがぶつぶつと独りごちていると、ジウは笑った。
「そこまで勉学なされているとは感心。だが回答はもう少し後にして下さい。まず話を進めます」
テオンは頷き、話が再開された。
「私とジウは話あった。なにより国の存亡の危機を告げる者が突然ふたりも現れて、ふたり共隠しているはずの青龍の鍵の存在を知り、だがひとりは鍵を渡せ、ひとりは鍵を守れという。なにより私達はリュカという者の正体を知らず、鍵を守れといった…ジウが顔を過去見ているスンユ殿の言葉の方に傾きつつも、もしや私達を攪乱させるなにかの余興かとも疑念を抱いていた」
正論だとサクは思う。
黒陵に突然男がふたりやってきて、ハンと祠官に鍵のことや黒陵が滅ぶだの言われたら、何者だとハンだって警戒するだろう。
「そんな中、4国合同会議が行われ、黒陵の祠官の補佐に初めて会った。気品あるその若者の顔は、どう見ても、私が会った者の顔だった。そして名も同じ。その時ジウがハン殿がひとりになった時に直接聞いたのだ」
――あの方はスンユ殿では!? それとも皇族か!?
――違うぞ。リュカは身寄りがねぇ奴なんだ。頭ひとつであの位置まで昇って来た。サクの友人のくせに、サクとはまるで違う賢さ。なんで俺の息子はあんなに馬鹿なんだか。
それを聞いてサクはひとり心で舌打ちしながら、ジウに聞いた。
「ということは、スンユとリュカの顔はそっくりだったということか?」
「左様。ただ違いは……、祠官が会われたリュカ殿は、茶色の長い髪をまとめられていようだが、私が会ったスンユ殿は、黒髪でサク殿と同じくらいの髪の長さだった」

