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吼える月
第26章 接近

「残念ながらテオン。"そっち"じゃねぇ。お前がそれ以上に辛酸なめていたものがあっただろう、それがないために」
「え……?」
そしてテオンは、目を見開いた。
「そうさ。代償はお前にあった青龍の力。その女のせいで、お前は祠官の後継の資格を失ったんだ。それだけじゃねぇ。……祠官。あなたの力もごっそり無くなった。ここに来てジウ殿よりはるかに力がないあなたを、体調のせいだと思ってましたけど、違いますね? 女はテオンとあなたの力を使って、テオンの病を治した…」
「そんな!! 祠官でも武神将でもないのに、ましてやひとの力を使うなど……」
「そう、俺もそんな奴は聞いたことがねぇ。だがそれをやり抜いたから、その女がいかに怪しくても祠官の中で"女神ジョウガ"なんだろう。浮石も結局は予言のように必要になったしな。
そして多分、祠官に今残っている僅かな力は、あなたを生きさせるためだけに必要となる最低限のもの。蒼陵の青龍の祠官として、神獣を祀る力はなくなった。きっとその中で来たのでしょう」
サクは青ざめている祠官とジウを見つめた。
「1年前の春、リュカが」
ふたりはじっとサクを見つめ返しているだけ。
「水害が起きたのはその後。そして怪しい女が開発を勧めた浮石を使う事態になった。そしてジウ殿は大人を募ってこの海底都市を造って、海上の者達を欺いた。なによりこの国には青龍の加護がない。だがシバやジウ殿から、そして微量ながら祠官からは青龍の力を感じる。青龍は滅んだわけではない。
このことがどういう意味なのか、説明して頂きたい」
サクの目に浮かぶのは、形になりきらない殺気。
「リュカとの密やかな接触の後、赤き月夜のあの凶々しい予言回避に行われた祠官同士の倭陵の結界は、元からあなたにはそれを繋ぐ力もなかったのに、あなたはその事実を黙られていた。
もしもあなたがリュカに協力していたのなら、話次第では、俺はそのせいで滅んだ黒陵の武神将として、このことを見過ごすわけにはいきません」
サクの声が固くなった。
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奏多

