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吼える月
第26章 接近
 

「あやつは弱いゆえに、権力になびく傾向がある。大分マシになってきていたのに、皇主の息子の地位に目が眩み、国を売ったようなもの。次期武神将としての心を説きすぎて、責任能力が育つ前に、あやつに妙な自信と独断に正当性を持たせてしまった。問題なのはそのことにあやつが気づいておらぬということ。

次期の地位を剥奪し、鍛え直そうと思っておりまする。私は他にも子供はおりますが、後継は……親の贔屓目なしに、公平な目線で決めたいと思いますがゆえ、これ以上この国にご迷惑にならぬ人材をと思っておりまする」

 武神将は神獣の力を扱える素質がある直系を後継にするのが習わしだが、そうした子宝に恵まれなかった場合、他の血を入れることもあるらしい。

 なによりも自らの血ではなく国の未来を優先する……、武神将は私欲に走ってはならぬのが基本精神。

 そう思えばヒソクが、国を思って輝硬石の素材を手に入れようとしても、それによって国家の秘密事項を漏らしたことが、問題になる。これは個人のものではない。そうしたことは、必ず祠官やジウを交えて結論を出すべきだったのだ。立場をわかっていなかったがゆえに、ヒソクは次期青龍の武神将の座を逃したことになる


 サクは思い出す。

――なぁ、サクよ。ジウ殿はあんな顔をして、随分と子煩悩だぞ? 出来の悪い子供をもの凄く可愛がって、俺に子育ての秘訣など聞いて来る。もうしつこくてしつこくて。しかもあのおっさん、酒飲んだら泣き上戸だしよ、疲れる疲れる。


 疲れると言いながら、嬉しそうにハンが言っていた時のことを。

 誰よりも我が子を自分の後継にしたいと願っていたのは同じ。子にかける愛情の強さなら、ジウだって同じだろう。他にも子供がいるのに、出来の悪いと嘆いていたヒソクを大事に育ててきたのだから。

 国を裏切ったことになる今ですら、ヒソクを見捨てるではなく、鍛え直すと言っている。子供に無償の愛情を注いでいる証拠だ。

 そんなジウに親しみを覚えたからこそ、ハンも毎回裏で愚痴りながらも、ジウの話相手をしていたのだ。


 だから――余計に際立つのだ。



 そうした愛情を知らずにいる、もうひとりの子供が。

 恵まれた素質があるのに、裏舞台でしか生きられない子供が。


 親に子供として認められていない、不遇の息子が。



――俺の名はシバ。姓はない。
 
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