この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第26章 接近

「だったらだったら!! 上の輝硬石は、スンユから持ち込まれたものではなく、蒼陵が開発した独自のものっていうこと? お兄さんの力も奪うような」
「そうだ」
祠官が深く頷いた。
「"真"なる輝硬石は、どんな力にも勝る。すべてを飲み込み守る……大地の龍の如く」
祠官がまっすぐとテオンを見つめた時だ。
「あ……」
テオンが、目を忙しく動かして呟いたのは。
「それ、だ。わかった…。思い出したよ、お兄さん……。"真"とされる輝硬石……、なんで青龍の加護がなくなったのか、なんでここに青龍殿を移したのか、なんで大人達が連れられて、子供と老人だけ残されたのか……」
そしてテオンは祠官を見た。
「父様に質問があります」
その小さな唇は戦慄いていた。
「"汝、子を守る強き盾にならんや?"」
息子の問いに、祠官は答えた。
「……我ら、子を守る強き盾にならん」
テオンは静かに涙を流した。
「"我ら"ということは、それは皆も納得の上のことなんですか?」
「そうだ。じっくりと考えさせた。その上で出た結論なのだ。無論、異議を唱える者もいる。それらが外の街の者だ。いずれ迎える準備の役目がある」
「青龍殿を移動させたのは、この地で"回復"をさせるため?」
「左様」
「あと、釈然としないことが……」
「テオン、頼む。俺にも分かるように説明してくれ。俺は釈然としないことだらけだ。なんとか、なんとか俺の頭でここまでこれたのに、一気に話がわからなくなった」
「お兄さん…」
「テオン……」
ふたりは切なそうに見つめ合い、それを見ている祠官とジウが苦笑する。
「お兄さんが武神将なら、"神獣縁起"は読んでいるよね?」
「知らん」
即答だった。
「は!? 神獣とはどんなものか、お兄さん玄武の知識ないの!?」
「俺の知識は読むものではなく、親父の受け売りか、玄武本人から直接聞いたものだけだが」
「はい!? 玄武本人から直接聞いたってなに!?」
テオンの声が上擦った。祠官とジウはぎょっとしたように目を見開いて、サクを見ている。

