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吼える月
第26章 接近

「そのまんま。お前が亀に見えてた…実は白イタチの神獣玄武から、少しずつだが神獣のことは訊いているぞ」
それに対してサクは朗らかだ。どこにも虚偽を申している様子はない。
「あ、あの……サク殿。玄武がイタチとは……」
ジウが慌てたように話の腰を折った。
「おう、ジウ殿!! イタ公……玄武がさ、俺の身体の骨バキバキ容赦なく折って、四肢を捻り取ろうとする荒技に出た時よ、聞かれたんだ。"朱雀、青龍、白虎にあって、玄武にないものはなにか?"って。それに正解したら、俺の身体を回復してくれるというから、俺もあいつに新しい身体を作って……」
「ちょっと待ってくれ、サク殿。な、なんの問いだ? 朱雀、青龍、白虎にあって、玄武にないもの?」
「簡単だろ? 外観からしてもうそれしかねぇだろ」
笑顔で向けられたサクの視線。そらすようにジウはテオンに向いた。
「テ、テオン様はおわかりに?」
「考えているんだけど全然。父様は?」
「い、いや……。ジウは?」
「それが全く」
人任せの全ての視線は、振り出しに戻り、全員がサクを見た。
サクは嬉しそうに答える。
「なんだ、馬鹿な俺だけわかったのか。ははは、それは気分いいや。答えは簡単だ、玄武だけつるっつるじゃねぇか」
「え……」
「は……?」
「……つ、つるっ…つる…」
三人はぽかんと口を開けたままサクを見た。
「あいつさ、ずっと仲間のふさふさが羨ましかったみたいだから、だからふさふさの白イタチにしてやったんだよ。だけど俺の力がまだ未熟だから、力がないものが見ると、小亀に見えるんだ。今、姫様の襟巻きになっているみたいだが…」
はあ…と、三人は唖然としたまま返事する。
「でよ、玄武イタチ…俺はイタ公って呼んでいるんだけど、俺とあいつ、心で会話出来るんだよ。玄武は慈愛深い神獣だって威張り腐ってるんだけど、根はいい奴なんだ。なんでも神獣には女神ジョウガから課せられた"盟約"があるせいで、青龍の異変に気づけなかったとかもうめそめそでよ……って、話脱線しちまったな。で、なんだっけ?」
「い、いや……神獣のことはお兄さん詳しそうだから、それはそこまでで。だったら青龍には"逆鱗"ってあるのは聞いてる? そ、その……玄武、イタ公から」
「いや、聞いてねぇ。それがなんだ?」

