この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
 

 慌てておかしな声がした前方を見れば……。



「これは……!!」



――サク。黒陵に、膨れた腹と痩せた体を持つ、最下級の魔物……"餓鬼"が蔓延している。



 歪で醜い人型をした……"餓鬼"という名の異形の群れ。

 サクは初めて目にしたが、父からの前もっての知識で、目の前のそれらが餓鬼だと確信があった。



――餓鬼に会ったら、倒そうとするな。餓鬼は食らいつくものがねぇ限り、切っても切っても蘇る。欲だけで生かされている……生きた屍だ。死ぬという概念はねぇ。消せるのは神獣の力のみだ。


 両手の指以上、もしかすると何百もに上る餓鬼の群れが、魔を弾くはずの玄武殿の敷地を彷徨している――。


 ただうろうろと歩くだけではなく……瓦礫を食っていた。


 荘厳な玄武殿の建物を。

 玄武殿に行き着くまでの、迷路を罠ごと。


 なんでも食らう餓鬼にとって、彼らを阻む障害などなにもなかった。



「ひもじぃ……」

「きぇぇぇぇぇぇぇ」


 不安定で頼りなげな声音の、奇声があたりに響く。



 彼らが通った跡は……荒廃していた。


 警備兵はどうなったのか。

 後を任せたシュウはどうなったのか。



 視界の端に、骨が覗く肉片がある。

 貪りつく数体の餓鬼。


 その中には、警備兵に支給されている刀を囓っているのもいた。



「――クソっ!!」



 武器で切れぬ存在ならば、武器鍛錬に優れた警備兵の意味はない。

 餓鬼にとっては、鍛えられた肉体も研ぎ澄まされた鋭利な武器も、全くの無意味。ただの餌にしかすぎない。


 餓鬼を消すことが出来るのは、不浄なものに対抗する神獣の力を持つ武神将のみ。祠官亡き今、父の力がどうなっているのかはわからないが、父しかこの餓鬼を抑えることは出来ないのだ。


「クソ親父っ!! 早く戻ってこいっ!!」



 ハンが来なければ、すべての希望が潰えてしまう。

 黒陵の運命も、ユウナの運命も。
/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ