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吼える月
第26章 接近

「は?」
サクの眉が跳ね上がる。
「父様とジウは、その"真"なる輝硬石を作っていたんだ。恐らくは、蒼陵にあるすべて青くきらきら輝く……、青龍殿を構成している素材は、その試作品か……成功品か。お兄さんが手枷によって力奪われていたというのなら、成功品なんだろうけれど、この部屋の中でお兄さんは力が戻っているから、その特殊効果は色々と種類があるのかもしれないね」
「テオン。俺はその種類よりもまず、"だから"の意味がわからねぇ」
――だからだよ、お兄さん。子供が残され、蒼陵の大人達がいなくなったのは。
「子を想う愛情と、大人が消えたその因果関係がわからねぇ。
仮にだ。仮に神獣青龍の……致命的となる逆鱗が手に入ったとしてもだ。それがどうして大人達がいなくなったことになる? 本当の青龍殿で、海上から連れられた大人達は、大好きな子供から遠く離れたここで、子供が好き好きと声でも上げているのか? それが輝硬石の…、蒼陵を守るほどの強さになるって?」
「お兄さん…。親が見せる子供に対する愛情を示す最強の方法は、言葉ではない。実行力……"覚悟"だよ。……子供のために、自らの命を捧げられる、そんな覚悟」
「……っ!? まさか……」
「そのまさかさ。その覚悟を問うのが、星見文書で女神ジョウガが、今の皇主の親にあたる男女に尋ねた言葉」
"汝、子を守る強き盾にならんや?"
「……それに対して、覚悟を表明した大人達の命が"真"の輝硬石となる力となり、子供のいる蒼陵を守る。……そうですよね?」
テオンの問いに、祠官とジウは静かに頷いた。

