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吼える月
第26章 接近

「そのイタ公殿が仰られる通り……」
「イタ公でいいよ。あいつ、本能丸出しのイタチだから」
「でも神獣玄武であろう?」
「そうだが……まあいいやイタ公殿でも。あいつ尊敬されると喜ぶから」
「では…。イタ公殿が仰られている通り、山脈は青龍の体躯。とすれば、ハン殿と見に行った場所こそが、逆鱗のある顎付近であった。数年毎に光るらしいそれを、先に見つけれたのが幸運。再度祠官と訪れ、複雑に絡まる木の枝の奥、光輝く円状のそれをなんとか青龍刀でえぐり出せば、それは刀に吸い込まれた」
「刀に入ったなら、どうやって取り出した?」
「出すのは、力を放つ時と同じようなもので苦にはならなかった。しかも出せば刀からさらさらと砂のように、煌めく粒が零れ出した。それが一度力となって刀に入った逆鱗が、石に再物質化出来る原料となった。原理はわからぬ。青龍刀の力なのか、逆鱗が元よりそういう性質なのか。
こうして輝硬石の原料は手に出来ても、青龍が力を無くして蒼陵に神獣の加護がなくなってしまった。このままでは蒼陵は輝硬石とという物質的防御が出来ても、敵が未知数ゆえに人外の力からの攻撃には心許ない。
そこで逆鱗を取った青龍が早く回復するように、青龍の居る場所に、青龍を祀る青龍殿を作り、力の回復のための措置を講じた。
また、石が出来る…物質化した際、凄まじい動力が生じる。それを渦に応用し、制御棒で統制できるようにした。テオン様も上の青龍殿から出る際に利用なされていたようだが」
そういえばテオンは、入るのは難しくとも、帰りは簡単に建物から出られると言っていたことを思い出した。ジウの言葉を否定しないところをみれば、そうした仕掛けを使っていたのは間違いないのだろう。

