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吼える月
第26章 接近

「渦となる動力は、外の塔で管理されている。塔の先端、地上に1番近い部分から放出されて渦になるが、1日に何度か動力炉を休ませねば、暴発する恐れがあった。その際に大きな音が出てしまい……」
「その音響を利用して、ここの…地形より活力を生じさせる"龍穴"にたてた碑に反射させて、そこから跳ね返る力までもを利用していたのか。この地にいる青龍復活のための」
ジウは頷いた。
「命がかかっている分、無駄には出来ない。輝硬石となるのを拒んだ者達や警備兵によって、密やかにこの海底都市を輝硬石で囲い、地龍と化した青龍に土地的な活力を与えようと、この地形が作られたのだ」
「しかしこの土地のどこに青龍がいるんだ? そんなでかいもの。地面は盛上がってねぇし……」
「力を無くした青龍は、擬態せず本来の姿に戻っている。外で、長々とそして拡がりをもって、土地に座しているものがあったろう……」
"本来の姿"
サクの頭の中で、イタチの声が蘇る。
――我は水の神ながら山に住まう堅固の神獣。青龍は川の神でありながら、大地に住まう包括の神獣。
"擬態せず本来の姿に"
「……川か」
「然り」
今度は祠官がサクの言葉を受け、力強く頷いた。
「そして青龍も、なんとか徐々に力を戻しつつある」
「だけどイタ公は、この地に青龍の力は感知できねぇって言ってたぞ?」
「もしかして、輝硬石のせいかもしれないよ、お兄さん」
確かに、船上でイタチは、ここの場所が気になると言っていたのだ。青龍の力が皆無なら、気にもならないだろう。
そして今、サクですら感じられる青龍の力を宿すものがいることを、神獣玄武が感じられないはずはないと考えれば、青龍殿を構成するあの青く光る素材に、他神獣を惑わす仕掛けがあったのかもしれない。神獣の力を持つ素材なら、堅固以外にどんな特殊性があるかわからない。無論、イタチも本来の玄武に戻れば、感知できたのかも知れないが。
「そこまでして、海底都市の要塞築いて。支配欲失わせる荒廃した街をさらして、外敵を欺くまでに非情さを装って。テオンを捨てるフリまでして。
そこまで滅ぶ"運命"とやらに抵抗しているのに、なんで人間の命を奪う方法をとることを妙案だと思える?」
サクの双眸が詰るように細められ、険しい表情をふたりに向けた。

