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吼える月
第26章 接近
そして密やかにサクはジウに囁く。
「……ジウ殿。リュカが脅しに持ち出したのは、あなたが隠し続けていたシバのことではねぇんですか? だからあなたはシバに、青龍刀が渡るように仕向けていたのでは?」
ジウの肩が跳ねる。
嘘をつけない彼は、反応したのをサクに見られて己を悔いる。
「そう考えれば、あれだけ毛嫌いしてながらも、遮煌時にあなたがシバを殺さず、そして今まで見逃し続けていた、おかしな事象の理由になる。
ギルがシバに、叔父ではなく従兄弟としたのは、ギルとあなたとの密な関係を悟られないように。ギルに面倒を頼んでいたのはテオンだけじゃねぇですよね?
あなたはやはり情の厚い方なんだ。あなたを頼った俺の親父の目は節穴じゃなかった。……そうでしょう?」
「………っ」
「【海吾】に着くまでに、聞かせてくださいよ。祠官が最期に口にしたあなたの"願い"とやらを。祠官の遺言なんだ、無碍にはできねぇですよね?
まあ餓鬼を相手に、ゆっくり話がしにくいかもしれねぇけど。その前に、餓鬼のいる海に船で行けるのか疑問だが、まあ…、武神将ふたりいればなんとかなるか、あははは」
そう、ジウの肩に手を乗せ、朗らかに笑った時だった。
「サクちゃん、お気楽すぎ。きゃはははははは」
背後から、小馬鹿にしたような言葉と、耳慣れた幼い少女の笑い声が聞こえてきたのは。