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吼える月
第26章 接近



 そんな二者同体の……胡散な姿を見せつけても、シバの下した決断は早かった。


「わかった。俺達はお前に従おう。子供達全員の命の重み、感じ取れ」

「本当に信用するのか、シバ。あれを!!」


 驚いたギルが反論する。


 "あれ"呼ばわりされ、餓鬼の前兆のようにも思われているユウナは、複雑な思いで、率直な声を聞いている。


「ああ。どんな姿を見せても、突如ユウナからあの男と同じ気が広がった。玄武と繋がる玄武の武神将が仕える姫だ。玄武の加護はないとは言い切れまい」

「そうだが……」

「判断の遅さが惨劇になる。どちらにしろ、俺達は籠の中の鳥。それでなくともスンユの仲間が俺達をどうこうしようと近づいてきている中、ここに籠城したとしても、何でも食らうという餓鬼とやらが放たれてるんだ、この砦ごとその餌になるのは明白。餓鬼と闘い続けても、取り囲んだ船から砲弾がいつ一斉に発射されるかわからない。元から餓鬼と共に一掃する気なのかも知れない。ならば子供達を守るために、手を打たねばならないんだ」

「まあそうだがよ……」

「餓鬼についての情報は、ここではあの姫だけがわかっている。その意見に従うのが妥当だ。それでなくとも、祠官の姫が武神将とこの国に逃げ込んできたんだ。現実を重く見て、蒼陵もそんな危険にあると考え、今ここは敵味方なく、乗り切らねばならない」

 ギルが、意見を変えないシバに言う。


「なあ、シバ。逆に、黒陵の姫が生延びてきたその理由は、餓鬼を放つ側だったからとは考えられねぇか。ジウに会いに行くという口実で、あの男が裏から操作して、餓鬼を乗せた船を呼び寄せたのだと……」

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