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吼える月
第26章 接近
 

「どんなことが起こっても、これが現実。びびるんじゃない。今はいつもお前を慰めるテオンがいないんだ、お前自身がしっかりしろ。」

「……ぅぐ……っ」

「テオンに笑われたくないだろ?」

 イルヒは泣きたい気分なのをぐっと堪えて、頷いた。


「オレ達はいつでも"正念場"を乗り越えてきたんだ。いいか、神獣が見放したと思っていたこの国に、オレ達を助けようとして別の神獣が現れただけだ。船でもあんなに大きな怪獣が現れても、神獣はお前達を見捨てなかったろう? あの"猿"とこの姫は、玄武の使い。俺達は見捨てられているわけじゃない。お前もそう思うだろう?」

 イルヒは何度も何度も強く頷く。


「イルヒ、外で見張っている子供達を全て中に。中にいる者達と共に、入り口のところで集合させろ。出来るな? 」

「わ、わかった!!」

 そして駆けだしたイルヒは、途中足を止めて振り返り叫んだ。


「お嬢!! 猿に告白する時は、元の姿に戻ってね!!」


 爆弾を投げ寄越してイルヒは走り去った。


「告白?」


 ざわめく男性陣に、ユウナは居たたまれない。

 だがそのざわめきを制したのはシバだった。


「スンユ。お前もまた子供の数を数えて、イルヒの数と合わせてくれ。いいか、子供達をひとりも残すな!!」

「な、なんで私が……」

「共に生き残るための協力だ。お前の身体を案じての簡単な仕事だ。お前がなにを考えていようと、これからは生き残るための同志として扱う」

「どちらが上だと……」

「命がかかっているこの事態に、上も下もない。お前ひとりで生き残れると思うのなら、勝手にするがいい。ああ、お前の仲間が助けにきてくれるのをここで待っていればいい。……まあ、餓鬼だとかいう海を乗り越えてここに船を着けられればの話」

「……っ!!」


 そして。

 シバの号令にして、砦の入り口に全員が集まった――。

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