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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
「なにを……っ!!」
「それが護衛としての務めです。それくらいの覚悟で俺は姫様の傍にずっといたんだ!! それが嫌ならぐだぐだ言わずに、生きて下さい!!」
「サク……」
それでもユウナにはまだ惑いがある。
自分の存在はユウナの生を縛る価値もないことに嘆きつつも、儚げで虚ろなユウナに喝を入れることにした。
「ここは餓鬼だらけで、正直俺は今、姫様の我が儘に付き合っている暇はねぇんですよ。今懸命に逃走中なんです。
それとも姫様、今ここで俺と餓鬼に食われますか? 生きたまま肉を引きちぎられ、バリバリと骨まで食われるのは、悶絶モンの痛さですよ!? 親父の尻叩きの何千倍の痛さですよ!?
あの気持ち悪ぃのにべろべろ舐められて、激痛の末に食われて……そしてあいつらの仲間になるんですよ!?」
「え、仲間に!?」
ユウナの虚ろな目に光が戻り、怯えたように揺れた。
そんな事実があるのか知らないが、サクは真剣な顔でもっともらしく嘯いた。
「そうですよ。あんな餓鬼になって、姫様は永遠に"ひもじぃ"とか"きぇぇぇぇ"とか変な声あげて、生きている倭陵の民を襲い続けるんです。
姫様がここで死にたいという我が儘を貫くのなら、姫様が無関係な弱い人々を襲う側になるんです!! それでもここに残りたいですか!?」
「サク、あたしを殺し……」
「そんなこと言うのなら、餓鬼の群れに放り込みます」
サクはくわっと目を吊り上げ、膨れあがってこちらにくる餓鬼に向けて、わざとらしく両手を揺らした。