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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
「ちょちょちょ、ちょっと待って!」
「待てません、姫様。いちにのさんです。それまでに答えがなければ、放り込みますからね。はい、いちっ」
ユウナが死ぬのなら一緒に死ぬなどと言った……同じサクから出た言葉とは思えぬ非情さ。
今のユウナにはそこまで気を回す余裕などなく。
「にの」
餓鬼となるかならないか。
その究極の選択に追い込められたユウナは、やがて涙声で言った。
「さ……」
「や、やめとく……」
サクは、ほっと息をついた。
ここでそれでもいいと言われたら、正直どうしようかと思っていた。
「それでいいんです。ここからは俺が貴方を離しません。どんなことがあろうとも、生きてここを切り抜けます。いいですね!? 馬鹿なことをまたほざいたら、あの餓鬼の群れの中に放り込みますからね!?」
ユウナは神妙な顔でこくこくと頷いた。
それを見てサクの顔が僅かに緩む。
いつも通りこそが、ユウナの調子を戻す術。
悟られるな。
状況はかなり深刻だということを。
そして自分は……7日しか傍にいられないことを。
「走りますよ、掴まっていて下さいね!?」
「わかった」
そしてサクは走った。