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吼える月
第26章 接近
「な、なに!?」
「なにも見えないよ……」
そして各々の心に、声が響いた。
"我は玄武。汝らは我が慈愛にて守られるべき、命の水"
「こ、これ……あのイタチの?」
「なんで声が!?」
"我が盟友青龍が今まで護りし汝ら、今、盟友青龍の名にかけて、汝らに見せん。汝ら、我ら神獣に守られしことを"
声が終わると共に、青い光が薄まった。
今まで通りの視界が戻って来た時、ギルが海を見て叫ぶ。
「餓鬼が!!」
大勢の子供達がギルと同じように、海を見つめる。
忌まわしき黒い澱みが、中心に向かっていた。
中心の――、
「お嬢、お嬢が光ってる!?」
青白く発光するユウナと……シバに向かって。
あの光がふたりを守るものだと、それが玄武の力だと、そう思った海を見つめる一同は、期待を裏切られる。
ふたりの光は消えたのだ。
代わって黒い餓鬼達は、獲物を見定めたように動きを早め……、
「お嬢!?」
「シバ、逃げろ、シバ――っ!!」
水面を跳ね上がるようにして上から……
「きぇぇぇぇぇぇっ!!」
そのまま横から……
「お嬢――っ!!」
「シバ――っ!!」
光を無くしたふたりを、一斉に埋め尽くしたのだった。