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吼える月
第26章 接近
シバはどうなのか。
青龍の武神将の息子として生まれたのに、その肩書きを捨てるシバは、どんな姿でいても、神獣の力で餓鬼を滅ぼせる力がある。
青龍の力だと、ユウナが思えたのは過去武闘大会でジウの力を見ていたからだ。サクが放つ力とはまた違う、重みあるその力の質は、ジウがハンに向けていた力と同じように思えたのだ。
生まれながらの光に穢れても、神獣の力を持つ光輝く者であるシバと、生まれてから光輝く者に穢され、神獣の力のないままの光輝く者となった自分。
どうみても、役立たずなのは自分ではないか?
弱々しい小動物も活躍しているのだ、イタチより何十倍も大きい自分もなにか出来ることはあるはずなのに、それがどんなものか見つけられない。
餓鬼を怖れる一方で餓鬼に対しての憐憫の情も湧くユウナは、この状況を打破出来ない自分の無力さを呪った。
出来ることが見つけられないから、聞いてみる。
「イタ公ちゃん、あたしもなにか……」
なにかしたいと、頭上のイタチに向けてそう口にした時だ。
「……くっ、なんだこれは!!」
イタチが焦ったような苦しげな声を上げた直後、餓鬼で覆われた水の壁に漆黒の円状の影が映ったと思うと、それが水の壁を突ききろうと、水の壁を外から強く押し、半円状の形状を崩していく。
「シバ、もっと力を出せ! 神獣の力が負けてはならぬ! このままだと餓鬼ごとこの中に雪崩込む!!」
「初心者に……簡単に言うなっ!!」
ふたりの力によってそれは水の壁を突き破ることは出来ず、その場で動きを止めてぶるぶると震えたかと思うと、やがて凄まじい勢いで、今度は水の壁を横に斬るかのように、水の表面を真横一直線状に走りだした。
そして――。
ドッガーン!!
後方で、なにかが衝突したような凄まじい破壊音がした。
「なにが起きたの!?」
その衝撃音に驚いたユウナは、思わず両耳を塞いだ手を取りながら、頭上にいるイタチに尋ねる。
「砲弾だ」
「砲弾!?」
つまり――。
「え、周りを取り囲んでいる船から!? 餓鬼だけではなく砲弾まで!?」
ユウナは青ざめた。