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吼える月
第26章 接近
そんなユウナに、真っ向から反対したのはシバだった。
「馬鹿言うな! 砲弾が降るところに行かせられるか! お前はここにいろ。オレが……」
「シバはここでイタ公ちゃんと"場所"を作っていて。皆を呼びにいくのは、あたしだって出来る!!」
「しかし……」
ドッガーン!!
「ぐだぐだ言わないの!! 今優先すべきは皆の命!! それくらいあたしに出来るわ!! イタ公ちゃんもそう思うでしょう? 思うなら、シバに移ってちょうだい」
発光するイタチは、自らの意志でシバの肩に飛び乗った。
シバが苛立ったように、ユウナを止めずに従うイタチを怒鳴る。
「この水の壁を作り出しているのは、ユウナの力もある。そのユウナが行ってしまったら、ここの水の壁が崩れるだろう!?」
だがイタチは、眉間らしきところに縦皺をくっきりと刻み込んだ凜々しい表情で、小さな両手を動かして三者の力を統制して水壁へと力を注ぎながら、シバの言葉に耳を貸そうとはしなかった。
「姫のは我の力。どこにいても、我はそれを引き出せる。あの者達を呼び寄せるのは、思った以上に湧いていた餓鬼をもっと浄化してからと思うたが、敵の力を見くびっていたわ。早めにひとつになった方がいい。姫、皆をここに連れるのだ。きっとあの"ぶんぶん娘"も喜ぶだろう。ここは我達に任せよ」
「ええ、そうよシバ!」
黒陵組の信頼と結束は強かった。