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吼える月
第26章 接近
シバの顔が怒気を帯びた。
「おい、本気に砲弾が当るユウナを行かす気なのか!?」
「我達が砲弾を向かわさぬように努力すればよい。このままなら、この妙な砲弾に力を奪われるばかりだ。
……くっ、我の力の大半を秘める小僧さえ帰ってくればこんなもの、弾けるのに!! ぐぅぅぅぅっ、我はまたこんな小さき砲弾を壊せぬのか、神獣が人間の力を阻止できぬのか!! 人間如きが、我を凌駕するのか!!」
ドッガーン!!
ドッガーン!!
「え!? 別の処から砲弾!? 違う処から砦を狙い撃ち!?」
「ここはあの奇妙な砲弾を放つ船が、円に囲んでいるのだ。ここで砲弾をなんとかしようとしているのに気づき、今度は我らの結界のない、砦の後ろから砦を狙って我らを乱そうとしているのだろう。このままでは砦が壊れるばかり。水の壁を広範囲にすれば、強度が落ちる。
よいか、シバ。姫こそが要だ。このままいいように振り回されて、今お前との連携が崩れれば、この浄化の結界は崩れる。そうなれば全員が、餓鬼に食われるぞ!? 今は一刻を争う」
「……っ」
シバが唇を噛んだ。
「ここは姫が適任だ。姫を信じよ。姫、皆がいるあの砦までは、水の壁が守っておる。はよ、皆を連れよ」
"適任"
ユウナは嬉しくなった。
たとえ任されたのが"普通"でも出来ることであっても、普通ではないふたり…ひとりと一匹だから出来ないこともあると。
「わかったわ!!」
そしてユウナは、宙に浮いたまま、半円状の水壁に守られたその道を走る。地面がないのに走れるのは、奇妙な感覚だった。