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吼える月
第26章 接近
◇◇◇
「うわああああん、お嬢とシバが死んじゃった!!!」
イルヒは餓鬼が押し寄せる海を見て、泣きじゃくった。
「あのイタチが神獣であるものか! 神獣なら、お嬢とシバの命を救って見せろよ、うわあああああんっ!!」
「見ろ、イルヒ!!」
イルヒの背中をさすりながら、ギルが海を指さす。ギルの服をぎゅっと掴みながら、イルヒは大好きな者達の命を奪った海を忌々しく見つめ、そしてその目は次第に驚きに真ん丸になっていく。
「う、海が割れた!?」
そして海が盛上がったのを見て、あちこちから悲鳴のような驚嘆が飛び交う。
その集団の端にいながら、海の様子を見ずとも海の様子を知り得ていたスンユは、面妖な顔をして呟く。
「なぜ……、なぜ玄武が蒼陵に? しかも青龍の力を開眼させるとは…。盟約を知らぬわけではあるまいに……」
その呟きは、誰にも聞かれることなく――。
「ねぇ、あの海……黒いの飲み込んでない!?」
「飲み込んでいるんじゃ無くて消しているんだよ!!」
「だけど海、まだまだ黒いよ!?」
子供達が騒いだ時だった。
「伏せろ!!」
ギルの合図で、子供達はその場に伏せる。直後凄まじい震動が砦を覆う。
「ちっ…、やばいな……」
それが砲弾だとわかったギルが険しい顔をして呟く。
ドッガーン!!
ドッガーン!!
このままだとこの砦は崩れ、子供達は瓦礫の被害にあうかもしれない。かといってこんな海に逃がすことも出来ない。
むしろ餓鬼のいる海の方が危険だ。
そんな時だった。
「イルヒ~、ギル~、皆無事~!?」
ユウナの声が聞こえたのは。