この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第26章 接近
 

 その捨て身の様が、ギルの疑念を薄れさせた。


「本当にユウナなのか?」


「ええ、あたしはユウナよ。ギル、イルヒ!! 海は今、玄武と青龍に守られているの。だから早く、海に飛び込んで!! 餓鬼はあたしが引き留めるから!!」


 餓鬼の視線すべてがユウナに向く。

 餓鬼達が立上がり、ユウナに向く。


 低く唸るような声は、ユウナを餌に相応しいか推し量っているよう。


 そしてその声音は、少しずつ高くなっていく。

 餓鬼の底なしの胃袋は、子供より大きく柔らかそうなユウナを消化したいと、餓鬼の足をユウナに進ませていく。


「……っ」


 ユウナは、震える唇を噛みしめて、一歩だけ退いた。


 無謀だと、あなたは怒るのかしら、サク――。


 好きだと気づいたこの心を伝えられないまま、サクと再会出来ないまま、無力なあたしが餓鬼を相手にするなんて。


 ユウナは耳飾りをぎゅっと握った。

 少しだけ、身体の震えが止まった気がした。


 大丈夫。あたしには、最期まで……サクがいてくれる。


――姫様。


 ええ、サク。


 あたしは、ただ守られているばかりではいやなの。

 あたしだって、守る側にいたいのよ。

 あなただって、身体を張って皆を守ろうとするでしょう?



「きぇぇぇぇぇっ!!」


 それを合図に餓鬼達の動きが速くなった。

 ユウナは足元の小刀を手に取り、声を上げた。

 

「さっさと海に飛び込んで、ギル、誘導を!!」



 飛びかかってきた餓鬼を横に避けて、ユウナはさらに怒鳴る。



「あたしの命を無駄にしないで!!」









「――お前らっ!! 海に飛び込め!! ぐだぐだ抜かす奴は、餓鬼に食わせるぞ!?」


 ユウナの覚悟を見て、ようやくギルが動いた。



「イルヒ、お前は正気だな。大丈夫だな? 手伝え!!」

「お嬢……」

 どうしていいのかわからないという弱々しい顔で、餓鬼を相手にするユウナを見た。


「イルヒ、お願いっ!! あたし達、お友達でしょう!? お友達なら、言うことを聞いて。水を……楽しい水の思い出を想起させて!!」
/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ