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吼える月
第26章 接近
「さあ、ギル!! あなたも飛び込んで。中にシバとイタ公ちゃんがいるわ。子供達のことをお願いね。イルヒがイタ公ちゃんの言葉を聞いているようだから、混乱はないと思うけ……きゃっ」
ユウナの銀髪が、自らから撥ねた血で赤く染まって行く。
「そんな願いは聞入れない」
ギルが低い声で言った。
「どうして!? 子供達を心配しているでしょう!?」
そして――。
「俺が心配して守りたいのは……ユウナ、お前だ」
ギルは子供達が飛び込んだ場所を背にして、振り上げた刀をユウナの袖に囓りついた餓鬼を切り落とした。
「子供達のところには、シバがいる。シバが無事であれば子供も無事だ。だから俺は、お前を守る」
ユウナの背を守るようにして、ギルは刀を構えた。
「お前は、早く海に飛び込め。お前は子供達を守った。だから今度は俺がお前を守ってやる」
ユウナの目が見開いた。
「なにを……っ!!」
「ジウに連絡をした。もうまもなくジウやサクも戻るだろう」
「連絡ですって!? あなたはシバとともに……」
飛び跳ねて襲いかかる餓鬼を左右に動いて避け、そしてユウナの小刀が餓鬼の腕を切り落とした。
「あいつは…サクはきっとジウから色々聞いているだろうから、あいつに聞け。お前に話している余裕はない」
「え……?」
ギルは口から血を吐き出した。