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吼える月
第26章 接近
「ああ……お前を嫁にしたかったな……」
ギルが餓鬼のように口を真っ赤にさせながら、ユウナに笑う。
「どうだ、俺のところに来ないか。お前の気風のよさに惚れた」
ギルは腹を押えて片膝をついた。
「あたしは……もう行く処は決まっているの」
「……玄武の…武神将か?」
その血の臭いに餓鬼が集まり、ギルは刀を横に振って上下に切るが、再びそれは動き出す。
「ええ」
きっぱりと言い切ったユウナに、ギルは笑った。
「お前はわからなかっただろうが、お前が傅いて忠誠を誓ったあの男を庇うその姿は、あの男が恋しくてたまらない…そんな女の顔だった」
「………」
「さあ行け。俺は海に飛び込んでも命は長くない。俺がお前を守ってやる。せめて…こんな顔の男でも、良い思い出にしてくれよ」
ギルの目は虚ろだった。
その手から刀が離れた時、餓鬼がギルの腕に噛みついた。
「さあ、早く行け、ユウナ!!」
ギルに群がる餓鬼。
だからユウナは――。
「守るって……言っているでしょう、この頑固頭!!」
ギルが手放した刀を振り上げ、餓鬼を叩き斬ったのだった。