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吼える月
第26章 接近
「そう言えば、スンユを見てない……」
「あいつはこの中、堂々と出て行った。餓鬼が現れるその中に。……餓鬼は、スンユだけを狙わねぇ。スンユに気をつけろよ?」
そしてギルは、思いきり後方に身体をそらし、その反動を利用して、ユウナを天井という遮りがない場所に、空高く…放ったのだった。
「ギル――っ!!」
「幸せになれよ!!」
「ギル、ギル――っ」
ギルの咆哮のような絶叫が響いた。
ユウナは宙を飛びながら、必死に手を伸ばしてギルを助けようと手を伸ばす。しかしギルとの距離は開くばかりで、その身体は次第に落ち始める。
「ギル、ギル、ギル!!!!」
涙で滲む視界に、鳥が群れて飛んでくるのが見えた。
「駄目よ、駄目、ギルを食べちゃ駄目――っ!!」
ピィィィィ~。
ユウナの声に反応したように、笛の音がした。