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吼える月
第27章 再来
「え? でもジウは今までずっと地下に潜っていたじゃないか。だとしたら、あの子は前にも海底都市に来ていた、ってこと?」
「そんな近くではなく、もっと遠い昔……」
そしてジウの目が見開いた。
「どうしたの、なにか思い出したの?」
「ありえないことを。テオン様が月毒症にかかれた時、移転前の青龍殿であの"きゃははは"を聞いたことがある気がしまして」
「え?」
「迷い込むのはありえない。あの時の青龍殿は後継問題が絡むために、厳戒態勢でした。そのために私は何度も警備兵に喝を。その中であの笑い声を聞いたような……」
今度はジウの目が細められた。
「おかしな話なのです。お父上だけが見知る…テオン様を治癒させたという"少女"が、あの娘…ユエではないかと思うことは」
「少女、だったの?」
「私は祠官からそう聞いておりました。愛らしい顔をした、赤い着物を着た少女だったと。だがそれから年数が経ちすぎている。同一とは考え難い……」
「僕のような月毒症の影響があるのなら、ずっと子供のままというのもありえるかもしれない。けれど……、あの子はなにか違う気がする。
月毒症の罹患者で無いのなら、彼女は……ずっと歳をとっていないことになる。そんなこと…」
「そう、ありえない。そんな…私のただの妄想なのです」
ジウはそう言って黙り込んだ。
渦が取り巻く青龍殿から、熊鷹の群れが大空に飛び立った。
「ほら、言った通りじゃねぇか! なにが"この鳥さんは上に乗れません"だよ。ちゃんと、空飛べるじゃねぇか!」
「サクちゃん…。鳥さんがすごい顔して一生懸命パタパタしてるの見えないの? 鳥さんが頑張っているんだよ?」
鷹の足にぶら下がっているユエが、気の毒そうな顔をサクを乗せる鷹に向けた。
「男なら頑張る! それは道理だよな、ワシ!?」
笑いながら鷹の頭にある冠羽を手で撫でれば、"ぴぇぇ~"と誇らしげに鳴きながら、ばさばさと翼を動かした。
「な? こいつもそう思ってるんだ。これは男だけにしかわからない会話。男はいつだって成長をしたがっているもんだ。ま、お前はチビだから、俺とワシの心はわからねぇだろうけどな」
サクも誇らしげに豪語したが、ユエはさらに残念そうな顔をして、ぼやく。
「ごめんね、鳥さん。女の子なのにね」