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吼える月
第27章 再来
武装した人間の男達をぶらさげる熊鷹は、厚雲に覆われた明るい空を群れて飛ぶ。
周りの景色も消える夜半に砦から船を出し、青龍殿に忍んだサクとテオンだったが、戻る時は明らかな時間経過を目で感じ取れた。
青龍殿の侵入者を感知していたらしいジウ曰く、青龍殿に滞在していたのは2日あまり。約束の3日になる前に帰還出来たことにテオンは喜んだが、サクは逆に渋い顔だった。
――危機を知らずに、2日も姫様の元から離れていたんだ。喜べるか!
「おい、ワシ!! もっと早く飛べないのかよ!?」
「サクちゃん、鳥さんは精一杯の早さだから、急かしたら鳥さんバテて飛べなくなくなっちゃうよ!?」
少女の悲痛な声を、サクは無視して冠羽のついた頭を撫でて直接に訊く。
「ワシ、お前これ以上は限界か?」
サクが乗る熊鷹は、疲れたような声を出す。
「悪かったな、急がせて。だが一刻も早くつきたいから、バテない程度に全速力で思いきり頼むぞ!!」
遠慮もなにもなく、ただひたすら早くユウナの元に辿り着きたいサクの喝を諫めたのは、サクが踏みつけて乗る鷹に同情してのこと。
「サクちゃん…、お船だと半刻もかかる距離を、鳥さん急いで急いで半分の半分以下にしてくれているのに」
「うるせぇな、ワシはお前じゃなくて俺の鳥なの!! お前はワシのお袋か」
「……ユエ、鳥さんは生めない……」
「そうかそうか、お前も賢くなったな」
「本当!? きゃはははは!!」
「ジウ……。僕は砦に近づくにつれて嫌な予感がぷんぷんなんだけれど……、なんでお兄さんあんなに元気にあの子と遊んでいられるんだろう。お姉さんが心配じゃないのかなあ。僕、お腹がキリキリしてるのに」
「実は私もキリキリです」
「え!? そんな顔しているのに!?」
「テオン様……。顔は関係ないかと……」
後ろでは、やはり同様に鷹に吊られた部下達の吹き出しが聞こえ、ジウがギロリと睨み付けると、鷹すら怯んだ。それくらいジウの顔には迫力があり、大体の敵はジウが凄んだだけで、敵前逃亡をしてしまう。
ジウの睨みを簡単に受け流すことができるのは、ハンを始めとした武神将の仲間くらいであり、ハンに育てられたサクですら、武闘大会でのジウの闘志に怯えて戦意喪失してしまっていた。