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吼える月
第27章 再来
「だったらあの子、"月(ユエ)"のユエなの!?」
「別にどこのユエであろうが、チビはチビ。これをくれたんだから、あいつはユエではないチビということだ。ややこしいな…」
「それ、簡単にくれるものじゃないよ、お兄さん!! "月(ユエ)"になれるのは武術は勿論、頭もよくなきゃ」
「じゃあいつは"月(ユエ)"じゃねぇな。ということはあの女の方のものか?」
「だからあの子は、実は相当に頭がいいってことで……」
「そんなわけねぇだろ、チビだぞ!? お前の方が相当に頭がいい。お前、あいつがそんな"月(ユエ)"の一員だったら、あのチビより勉強好きのお前が敵わないってことになるぞ? お前、あのチビに負けるのか!? お前のようにチビのふりして頭いいのを隠しているように思えるのか? 自分の年もロクに数えられず、きゃはははは遊んでばかりいるチビに?」
「う……」
「買いかぶりすぎだ。あのチビは偉くない。偉いのはあの笛に決定。…ということで、おぅおぅ、この船…まだ続いているな。この砲筒の向き、これは……まさか砦を囲んでいるのか?」
「なんで!?」
サクの目が険しくなる。
「姫様……」
それの連なりは、円を描いていることに気づいたサクは、さらに怪訝な顔をしながら、鷹の頭を撫でて少し降下させる。
そしてサクは、規則正しく並ぶそのひとつひとつの船体に刻印されている模様を目に捕らえ、驚きに目を瞠った。
「おいおい、なんだよあれは。なんで黒陵の船があるんだよ」
土産以外の国を代表するような武器に、黒陵を象徴する神獣玄武の模様を彫り込むには、黒陵中枢……、即ち、祠官か武神将の許可が必要である。
それが現実にあるということは、祠官側が許可をしたということになる。
しかも砲筒を始めとして、船体のところどころには銀色に輝いている。これは中央が持ち得る輝硬石だ。
リュカが祠官代理として命令したにしては、多くの船が速くできあがりすぎている。
「サク殿」
横にジウが飛んで来た。
「私はハン殿から、旅船以外の…、砲弾を装填したような船は持っていないと聞いていたのだが。それは蒼陵との友好の証だと」