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吼える月
第27章 再来
「だけどそう考えると、ヒソクはスンユという皇主の三男と繋がり、しかも黒陵の餓鬼に関係する奴らとも繋がっているということになるよ」
「繋がっていればまだいいがな」
サクは鋭い眼差しで黒い海を見る。
「捨て駒、という線もある」
ジウとテオンが唾をゴクリと飲む気配をサクは感じた。
「ただヒソク殿にしろ、蒼陵の民が船を動かしているとなれば、どうやって船に、海を黒く染め上げるほどの餓鬼を船に乗せたのかという問題が出てくる。確かに俺が黒陵を出る時は、餓鬼が溢れかえっていた。だが、餓鬼は船を食う。中央が持つ輝硬石の武具すら。そんな餓鬼がおとなしく船には乗っては来れまい」
「じゃあどうやって!? あの船はどうやって餓鬼を運べたんだよ!?」
「可能性的には――」
サクは、ある船を睨み付けながら言った。
「餓鬼の親玉がここに来てる。穢れきった奴が操って黒陵からここまで連れたか、船をここに停泊させている間に大量発生させた可能性がある」
サクの堅い声から、サクがどんな相手を想像しているのかを感じ取ったジウが、威嚇に唸るような声を出した。
「サク殿、まさかそれは……」
「そう、リュカが傅(かしず)く、光輝く者。武神将が繰り広げた"遮煌"の生存者だ」
ジウは険しく目を細め、唇を引き結ぶ。
「あまりに餓鬼の気配が多すぎて、あいつの気配を辿れねぇ。だがあの金の色は覚えている。リュカを使い、俺の四肢を砕いて、玄武の鍵を奪い……」
サクの脳裏には、あの赤い月夜の惨劇が繰り広げられている。
運命ともいえる、あの一夜を。
「……親父諸共、黒陵を滅ぼした、あの…金色に光る男を、俺は忘れねぇ」
サクは、うっすらと金色の光を漏らすひとつの船から目を離さない。
「その男が来ているのなら、蒼陵を滅ぼすとするのもあいつの……ゲイの仕業だろうな」
ジウもテオンも押し黙った。