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吼える月
第27章 再来
「正直……、武術以外の俺の感覚はあてにならねぇ。だが俺の直感が、餓鬼に紛れるようにしてある気配が、あいつの…ゲイの気だと警鐘を鳴らすんだ」
サクは剣呑な眼差しを細めて、冷ややかに言い放つ。
「ゲイはここに来ている。恐らくすべての餓鬼は、あいつの手の内だ」
「ゲイって強いんでしょう? それが乗り込んで来たのなら、武神将ふたりで勝てる?」
サクはジウを一瞥すると、薄ら笑いを浮かべた。
「親父がゲイに殺されたのだとしたら、ふたりでも太刀打ち出来ない」
自分が倭陵で二番目に強いジウと力を合わせても、それでもハンには敵わない。それほどまでに突出した力を持つ最強の武神将を倒したのなら、倒した相手が最強の名を戴くことになる。
「だが親父は俺を助けるために、玄武の力のほとんどを俺に渡していたんだ。すべての玄武の力があったとしても、親父が勝てる可能性は皆無ではないというだけの、僅かな可能性しか残されていねぇ」
「じゃあどうするの!?」
「太刀打ち出来ないが、俺達には切り札がある」
「なにそれ!!」
「ゲイは、禁忌とされる女神ジョウガの箱を開く気だ。つまり、青龍の鍵が必要となる。黒陵では祠官だけが在処を知っていた。だとしたら、それを利用して、隙を伺うしか無い」
ジウがびくんと肩を震わせた。
「青龍の鍵は、ジウ殿以外に誰が知る?」
強張ったような真摯な顔でジウが口にしたのは、
「……おりませぬ」
否定の言葉だった。