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吼える月
第27章 再来
「…この状況なら、ヒソク殿を使っているのはスンユだけとも限らねぇ。ジウ殿。蒼陵が誇る軍船は今どこに?」
「……いずれ来たる地盤沈下で船が全壊するを防ぐ為に、ヒソクに言って、浮石を船体にくくりつけさせ、緋陵との境界となっている大きな岩間の影に分散させて隠した」
「それが今もあると確かめたか?」
「いや、予想以上の激しい揺れに無事ではないと思いつつ、船よりもまずは海底都市の開発ばかりを、ああ――、もしかしてそのすべてが、改造されてあの船になっているといいたいのか!? それがサク殿の言われる、"使われる"ということか!?」
「……テオン。監視船は緋陵境界まで行ったか?」
「いや、行ってない。子供達が監視しているんだ、国境ぎりぎりのところに船を走らせて、うっかり緋陵の中の海に入り、定期船ではなく怪しいと思われたら、緋陵の警備兵になにをされるかわからないもの。緋陵には船はないけれど、陸から遠くに浮かぶ船に命中できるような…、大量の火器と火薬を作っている国だと聞いているし、女だけとはいえ、過激だと聞いてるから」
過激と聞いて、その国の武神将だった母親を思い出す。
あれは性格だと思ったが、国の気質なのかもしれない。
「修繕と置き場所は恐らく決まりだな。大量の船を一から建設するとなれば、場所と技術とひとが必要になる。短期間で誰にも知られずに、これだけ多くの船を最初から組み立てて作るのは不可能に近いが、蒼陵の立派な船が土台であるのなら、黒陵産を印象づけさせる船体の細工と、輝硬石の砲筒を備えればいい」
「しかしサク殿。蒼陵に、輝硬石の砲筒を作れる技術は……」
「ジウ殿。スンユがいる。スンユが中央の者であるのなら、既に輝硬石製の武器が開発されているのだから、その技工者達に協力させればいい。それだけの権限はあるだろう、いくら放蕩とはいえ、皇主の息子なら」
「うむ……」
「ただ問題は、スンユとゲイが手を結んでいるかどうかだ。玄武の紋章を刻んでいたあたり、無関係とはいいきれないが、スンユが別のことを考えて作り上げた船を、ゲイが横取りした可能性もある。スンユと同じ顔をしているというリュカがどう動いているのかもわからない。どちらにしろあれらの船はヒソク殿が絡んでいると思う。スンユにもリュカやゲイにも、船の知識はねぇだろうから」