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吼える月
第27章 再来
「円に囲まれていて、隠れるところもないじゃないか、意味ない気が…」
「いや……テオン。俺達にとっては意味がある。ヒソク殿がいる場所の反対側にゲイがいるんだ。武闘大会でのヒソク殿を見ていれば、ヒソク殿は逃げ回っていながらも、必ずその目は相手を見続ける。相手の動きを把握しないと安心できない性質なんだろう」
「さすがはサク殿…。左様で…お恥ずかしい限り」
「だとしたら、気をつけるべきはゲイの船だ。こういう時上空から見れるのはいいな。円陣を乱して砦に近づいている船をみつけられる」
「わかったお兄さん。よし、前方に影が見えてきた。あれはきっと砦……え、ええええ!? なんで上がないの!?」
「攻撃を受けていたのか。ここまでのことを【海吾】がしてたとは思えねぇな。だとすれば……」
ジウと目が合うと、ジウは慌てたように視線を外す。
「ジウ殿、ヒソク殿はシバのことを知っているのか?」
「……っ」
「知っているんだな?」
「……【海吾】に赴く前のギルと私の会話を盗み聞きしていたようで。ヒソクより年上でも子供として認めているわけではないと言ったら、安心したようにもう何も聞いてこなくなった」
忌まわしき、青く輝く…光に穢れた者。
子供とも兄とも思われない、孤高の存在。
「青龍の鍵は、シバに関係あるのか?」
「……っ、関係ない」
否定の直前の狼狽を、サクは見て取った。
ジウは嘘がつけない。
"蒼陵の中で、一番わからない場所"
つまりそれは、ジウだけがわかっている場所。
ジウだけが隠している場所。
シバという存在がわかられている以上、シバが鍵について知っているのではないかと思うのは、至極当然のことのように思った。
シバの持ち物か。
それとも、ユウナのように…身体の一部なのか。
黒陵でもはっきりと鍵の形状を目にしたわけでは無い。あれだけ目をそらさずユウナの凌辱されている場面を見ていたのに、ゲイがなにかを手にした様子もなく。
だから青龍の鍵も、物質ではない可能性がある。
ジウがどこにいるかわからない以上、シバに鍵を知る可能性があるから、こうして脅しのように恐怖を与えて鍵を奪おうとしているのかもしれない。
玄武の鍵を取り出した時のように、理不尽にも力尽くで。