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吼える月
第27章 再来
「うわあ、あそこ見てよ、なにあれ!! 異常な満潮!? なになに!? 変なまだらな青い水なんだけど、あれなに!?」
海が色以外に"異常"を見せていた。
高く練り上がった海に、テオンが混乱したように騒ぐ。
「あれは自然にできたものじゃねぇ。あそこから、イタ公の力を感じる。恐らくイタ公は、海の中で皆を守っているんだ」
「あのイタチが!?」
「慈愛深い玄武は、自らの力を出せない盟約とやらを破って、とうとうそこまでやってくれたらしい。これはイタ公に借り、だな。
イタ公の力がすごく弱くなっているが、まだ感じられるから、命は大丈夫のはずだ。だができる限り早く行きたい」
どんなに駆け付けたくとも、ここは空。
一番早い乗り物に乗っている以上は、もどかしく海を見るしか出来なかった。海を泳ぐ方が、餓鬼がいないとしても時間がかかりすぎる。
サクは、盛上がって見える海を見つめるジウに言った。
「感じるだろう? イタ公の…玄武の力は、親父とよく闘っていたあなたには、どんなものかよくわかるはず。だったら、わかるだろう? あなたと同じ……青龍の力もまた、玄武の力の他に存在していることに」
「………」
「これはヒソク殿の力か?」
「……否。ヒソクの力は、ここまで大きくない」
「だとしたら、他に誰がいる? あなたの力を受け継いでいるのは」
サクのまっすぐな視線から、ジウは無言で目をそらした。
名前すら出て来ない、忌まわしいとされる息子。
だがそうすることで、シバを守ろうとしているのなら、もう頑なに無関心を装う"フリ"をする峠は越え、事態が変化しているのだ。