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吼える月
第27章 再来
「あいつは、イタ公と共に皆を守っている。こんな目に遭わせたのは、父と兄弟だというのに。あいつは、ヒソク殿のようにあなたの手をかけられなくても、こうやって成長して、あなたの血に流れる青龍の力を目覚めさせ、あなたのように民を守ろうとしている。それでも親子ではないと言い切るのか?
あなたはどんな目的があろうとも、民に黙って地下に潜って、どんな外敵からも民を守るという任務を放棄していた事実は変わらない。その間、シバは、ギルは。子供達の支えとなり、こうしてイタ公と共に守ろうとしている。その事実を心に刻んでくれ」
「………」
「ジウ殿。俺は玄武の武神将だから、青龍の鍵がどこにあるのかなんて、聞くつもりはねぇ。だけどあなたが青龍の武神将なら、青龍の鍵を守って欲しい。玄武の鍵のように、奪われずに守り抜いて欲しい」
青龍の鍵が、シバに関係するというのなら――。
「俺は親父と共に、あなたのことを信頼したい。だから見せてくれ。あなたにとっての真心を。親父が俺に伝えたような、父親として子に見せる…あなたにとっての正義を」
ジウが苦悶する表情を作り、目を伏せた。
「お兄さん、船が見えた!! 明らかに怪しい船が、砦の残骸につけている。だけどちょっと小さい船も横についてる。なんだろう、脱出用なのかな」
「よし、じゃあ行くぞ。ジウ殿はヒソク殿の救出を。俺はテオンと姫様達の元へ」
「サク殿……、ヒソクは…」
「助けないというのはナシだからな? きっと親父でも同じ事を言ったと思う。あなたが行かないのなら、俺が行くが?」
ハンの名前を出した途端、ジウは唇を噛みしめるようにして、頷いた。
「かたじけない。親の責任として、情けない愚息を引き取らせて貰う。皆の者、第一部隊のみ私と共に!! 残りはテオン様を、祠官を守れ!!」
一斉に返事が聞こえる。
よく訓練された警備兵だとサクは思った。
「では、後でまた会いましょう、おふた方!!」
恐らく、ヒソクがここにいるかもしれないと分かった時から、ジウは早く餓鬼の危険から救い出したくて仕方が無かったのだろう。
その姿がどんなものになっていようとも、ジウにとって息子なのだ。
その気迫を感じ取ったのか、鷹は速度を上げて怪しげな船に向かっていった。それに少し距離を置いて十名ほどが追従する。