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吼える月
第27章 再来
「おいテオン。やっぱり、ジウ殿がいないと不安か? 元気ねぇけど」
「ううん、僕はお兄さんを頼りにしている。不安というより、なにか嫌な予感がするんだよ。この先の展開を見ていたくないというような」
「見ていたくないと目をそらして、そのまま空にいるか?」
するとテオンは静かに笑った。
「目をそらして大事なものが見えなくなってしまう祠官にはなりたくない。僕は、この国の運命を見続ける義務がある」
その姿は幼き少年のものではあるが、目の輝きは、志をもった成人男性のもののように感じた。テオンはようやく、自分のなすべき道を見いだせたのだろう。
そう思うと、サクから自然に笑みが零れた。そんな状況ではないということは、十分に承知していながら。
「あれ、お兄さん…。僕達と同じように、空に……誰か浮いているよ?」
それは鷹に吊らされた……、
「あれは……、あのチビの"名無しの片割れ"じゃねぇか。あんなところで、鈴みたいの鳴らしてなにしてるんだ?」
「お兄さん!! あの盛上がっているところの餓鬼が、消えてる!!」
「なんだあいつも、チビみたいなけったいな道具があるのかよ。なんであんな場所で……」
「ねぇ、あの船……やけに金色に光ってない?」
「あの船……、ジウ殿が行った船の反対側だ。つまり……」
サクの直感が、この上ない危機を知らせる。
その焦燥感に思考を独占されたサクは、微かに耳に届く笛の音が、激しい旋律に変わったことに気づかない。
「あの名無しの片割れ、危ねぇ!! ワシ、あいつを救うぞ」
ぴぇぇぇぇ。
だが――。