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吼える月
第27章 再来
「!!!!」
降下するサクの前で、船から放たれた金色の光が女の鷹を貫き、そのまま手にしていた鈴のようなものをはじき飛ばしたのだった。
舌打ちするサクが、海に落ちた女を餓鬼の餌にさせまいと、鷹に檄を飛ばすが、餓鬼は彼女を無視するようにしてひとつに集結し、放置された女は海に沈んで見えなくなっていった。
餓鬼の餌とならなくても、このままでは海の藻屑になると、助けに行こうとしたサクだが、女の姿を消した海から、にっょっきりと女の手が出て来て、五本の指がくいくいと、様々な角度で動いた。
「あいつ……絶対俺だとわかってしていたよな。あれは溺れてもがく人間の手じゃねぇよ。なんであいつ、黒陵の警備兵だけが知る指文字で、んなことを伝えてくるんだ!」
女の手は、サクにはこう伝えていた。
"触るな危険、馬鹿が移る"
「くそ――っ!!」
怒りに燃えるサクに、上空からテオンが叫ぶ。
「お兄さん……。なにか変。海の…餓鬼達が、集まって……あの船から伸びる道になった。え、なんで道? まさか……」
「まさかこれは……」
「……っ、そのまさかだよ、やっぱり出て来たよお兄さん!! 簡単に出て来たよ、金色に光る男が!!」
「テオン、やばい。やばいぞこれは!! 姫様達を救出に行く。お前はそこで兵に守られていてくれ!! 俺にお前を守る余裕ねぇ!!」
「お兄さん、ゲイが餓鬼の道を踏んでもうきているんだよ、間に合わな」
「間に合わないのなら、間に合わす。ワシ、大仕事だ。行け――っ!!」
ぴぇぇぇぇぇ。
「姫様、イタ公――っ!!
頼む、ワシ。もっともっと早くっ!!」
ぴぇぇぇぇぇ。
そんな時だった。
「……っ!?」
急降下するサクの心に、突然流れてきた消え入りそうな声は。
"……はよ…"
弱っていることがわかるこの声は……。
「イタ公、おいイタ公!!」
"はよ、このままでは……小僧……"
それはサクを呼ぶ、弱々しいイタチの声。